どんな本?
人生に悩んだ元ヴィレッジバンガードの店長が、知らない人と30分だけ会って話してみるというコンセプトの出会い系サイトで、会った人に本をおすすめする活動を一年間続けた時の体験談を綴ったエッセイです。
こんな人におすすめ
今までとは違った世界をちょっとだけ見てみたいと考えている方は、ほんの少しだけ勇気をもらえるかもしれません。また、「これまでとは毛色の違う本をおすすめされたい!」という方も、実際に著者がおすすめしてきた本が40冊ほど紹介されているので、実際に紹介される側の気分になりながら読むのも楽しいと思います。
印象に残ったポイント
世の中いろんな人がいる
まず一読しての感想は、当たり前ですが世の中いろんな人がいるなあというものでした。
本書で出てくる出会い系サービス(Xという名前が本書の中では使われていました。旧Twitterのことではありません。)を通じて実際に会われた方は、一人一人年齢・性別・職業などほとんど共通点がなく、だからこそ読んでいるだけでもその体験にリアルさを感じて引き込まれました。
ヤリモクの人、TOEICで満点を取ることが趣味の人、会う人に無料でコーチングをしている人、ノマドワーカー、メンタリスト、映像作家など実に様々な人が登場します。
そして、その一人一人との会話の描写だけで、多様な価値観に触れられた気がします。
いつも自分を苦しめるのは自分自身の思い込み
この筆者が出会い系を始め、続けられた理由は、もともと旦那さんとの不和や好きだった職場(ヴィレッジバンガード)で徐々に職場の方針と自分自身の方向性が合わなくなっていったことにあることが何度も作中で語られています。
そんな人生に行き詰まりを感じていく中で、その行き詰まりは自分の思い込みが作り出していること、そしてその思い込みからだんだんと人との出会いを通じて解放されていったことが書かれています。
例えば私はこの本の中で一つのエピソードが印象に残っています。
それは、無料でコーチングをしている人と会ってコーチングを受ける中で、「一年後どんな自分になっていたいですか?」という質問をされた場面の話でした。
筆者は、ある理想を思いつくのですが、「他人を自分の根拠にするのは間違っている」という思いから、それを言葉にするのをためらってしまいます。逡巡の果てに、「今よりももっと素敵な人に囲まれていて、楽しく過ごしている」という理想を語ります。
その理想に対して、コーチの方は「すごくいいことじゃないですか」という言葉をかけ、筆者自身も「言われてみればそんな変なことではないのに、なんでこんなにためらったのだろう」と一つの思い込みから解放されるというエピソードです。
私自身、理想の生き方や自分の想いについて、抑圧的になってしまう傾向があります。
でも、本当はその思いは「今よりももっと素敵な人に囲まれていて、楽しく過ごしている」という理想のように、人が聞けばなんてことはない当たり前の思いなのではないかとちょっと考えられるようになりました。
知らない人でも、友達、知り合いでも少しは自分のことを開示できるようになりたいなと、この本を読んで強く思いました。
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